毎日の電車の中で、一番目にするのが、AppleのiPhoneを持つ人たちです。中には、2台を左手と右手にもちながら、忙しくタッチしている人もいます。
iPhoneは、スマホの中でも画面の操作性や、使いやすさ、わかりやすさなどはピカイチと言ってもいいと思います。
しかしながら、iPhoneを取り巻くApple全体のシステムについては、かなり問題点が多いと言わざるを得ません。
最近は、パソコンだけでなく、スマホの相談もよくあるのですが、その中でもiPhoneやiPadに関するトラブルもかなり多くなってきています。
iPhoneに限らず、一般的にスマホでトラブルになるケースの大半は、新しい機種を購入した時のデータや設定の移行ができないというものです。
iPhoneとAppleの根本的な問題点は、Apple IDにあまりにも大きな権限と義務を持たせすぎていることに起因しています。
つまり、アプリの購入のたびにパスワードを入力するやり方や、サインアウトするだけなのにパスワードを求めてくるやり方、iTuneにiPhoneを登録するときや、データのバックアップなどの場合にもすべてApple IDで管理が行われているやり方などです。
もし、Apple IDやパスワードなどを変更したり、パスワードを忘れてしまった場合には、それまでのデータを復元することはもとより、そこで登録したすべてのサービスが無効になってしまうという危険性があります。
アップルの電話サポートについても、本人確認のためにはApple IDとパスワードが必須であり、それ以外で本人を確認する手段はほとんどないようです。たとえ、Apple IDと連携しているクレジットカードを手元に持っていても、本人とは認められないようです。
さらに怖いのは、パスワードを忘れたときに、3回以上間違ったパスワードを入力してしまうと、Apple IDにロックがかかり、それを解除するためにはウェブ上のiForgotというサイトに行き、パスワード再設定のメールを受信する手続きを行うといった大変面倒なセキュリティ手続きが課されています。
このようなセキュリティ手続きは、Apple IDやパスワードを忘れなければ、まず問題ないと思われますが、iPhoneを買い替えるという時点で多くのトラブルを引き起こす原因になっているのです。
日本では、iPhoneはソフトバンク、au、ドコモの3社のキャリアが販売しています。この3社の競争を加速させたのが、電話番号を変えないで他社のスマホに移動することができるMobile Number Portability(MNP)、通称ナンバーポータビリティと言われるしくみです。
このしくみにより、ドコモからソフトバンクとか、ソフトバンクからauというように、電話番号を変えずに移動できるようになったのですが、最初のiPhoneで取得していたApple IDが、ソフトバンクのメールアドレスだったり、ドコモやauのメールアドレスだった場合に、トラブルが発生します。
つまり、電話番号は持って移動できても、キャリアから与えられたメールアドレスは持っていけないということが悲劇を生んでいます。
具体的に言うと、最初のソフトバンクのiPhoneで設定したApple IDが、「apple@i.softbank.ne.jp」だった場合、ドコモのiPhoneに切り替えると、このソフトバンクのメールは受信できないようになります。
この段階では、Apple IDのパスワードを変更しようと思っても、メールが受信できずにパスワード変更の手続きができません。また、Apple IDがロックされてしまった場合でも、その解除が不可能となります。
つまり、Apple IDには、キャリアのメールアドレスを使ってはいけないのです。しかし、日本のiPhoneユーザーの多くは、キャリアのメールアドレスをApple IDにしているのではないかと思います。(このような場合、My Apple IDのページから、Apple ID自体を変更することも可能です)
さらに、iPhoneの問題点として、データのバックアップの問題があります。2台目のiPhoneを購入して、最初のセットアップを行うときに聞かれるのが、「iCloudバックアップから復元」と「iTunesバックアップから復元」の2つの手段です。
iCloudバックアップを使う人は少ないと思いますが、本当にiCloudにすべてのバックアップがとられていると思ったらそれは大きな間違いです。
それは、iCloudにデータをバックアップするためには、LTEの回線ではなく、WiFiの回線が必要だからです。つまり、無線LAN経由でしかiCloudにはアクセスできないということなのです。iPhoneの設定からバックアップをする設定にしていても、実際にはバックアップされていないことの方が多いのです。
一方、iTunesバックアップにも問題があります。iTunesを使うためには、WindowsやMacのパソコンが必要です。さらにiTunesをインストールして使い方に精通しておく必要があります。
当然、Apple IDが変わっていないことが、バックアップから戻せる条件になっています。このバックアップからの復元の場合は、データジャンルを選択してバックアップすることはできません。すべての設定やアプリ、写真やビデオなどがまとめてバックアップから復元されます。
このため、新しいApple IDを取得した場合、古いApple IDのデータを引き継げるかといえば、それは無理というしかありません。つまり、Appleの考え方は、人が基準ではなく、Apple IDが基準になっているという点で、トラブルが生じやすい構造になっています。
この点、アンドロイドのスマホは、これほど厳しいID管理を行っていません。パソコンに接続すれば、外付けハードディスクと同じようにデータをパソコンに移し替えることができます。アンドロイドのスマホの場合は、GmailがIDになっていますので、もちろんGmailのパスワードを忘れると困るのですが、IDの権限が及ぶ範囲が少ないので、データバックアップからの戻しなどについては、比較的自由度が高いといえます。
ということで、iPhoneを使っている人に言いたいことは、
1.受け取れないメールをApple IDにしてはいけません。
2.もし1の場合は、予備のメールを必ず登録しておいてください。
3.iCloudはあまりあてにしてはいけません。
4.バックアップは、iTunesで行いましょう。
5.パソコンのアップデートやiTunesのアップデートは日々行っておきましょう。
6.新しいiPhoneにバックアップの復元が終わるまでは、古いiPhoneを販売店に返してはいけません。
7.Apple IDのパスワードは、よほどのことがない限り、変更してはいけません。
8.Apple IDやパスワードは、必ず紙に書いて、手元に保管しておいてください。
今後のiPhoneのためにAppleの関係者の方に伝えておきたいことは、
1.パスワードを忘れた人や、Apple IDのメールが受け取れない人にための救済方法を拡充していほしい。
2.パソコンや無線LANを持っていない人のために、古いiPhoneのデータを新しいiPhoneに移動できるシステムを開発してほしい。(有料でもいい)
3.電話サポートでの本人確認の方法の手段について、よりよい方法を考えてほしい。
以上です。